動画にも EXIF はある? — MP4 / MOV に埋まっているメタデータの正体
写真の JPEG を開けば、撮影日時・カメラ機種・レンズ・F 値・ISO まで、当たり前のように EXIF として表示されます。一方、動画ファイルを右クリックしてプロパティを開いても、「サイズ」「長さ」くらいしか出てこない。
実は動画にも、写真とほとんど同じ情報が埋まっています。ただし呼び名と仕組みが違うだけです。この記事では、動画ファイルに実際に入っているメタデータを、どこにどう入っているのか、何が読み出せるのかという視点で整理します。
結論から — 動画に「EXIF」はないが、相当物はある
まず用語の整理です。EXIF(Exchangeable Image File Format)は静止画用の規格で、厳密には MP4 や MOV の中にそのままの形では入っていません。動画には、EXIF の代わりに以下のような仕組みでメタデータが格納されています。
| 仕組み | どこで使われるか | 中身の例 |
|---|---|---|
ISO BMFF メタデータ(udta / meta) | MP4、MOV など | カメラ機種、撮影日時、GPS、コメント |
| QuickTime メタデータアトム | MOV(QuickTime) | 著作権、機種、ソフトウェア、Apple 固有データ |
| XMP(Adobe 由来) | 各種コンテナ | レーティング、タグ、編集ソフト情報 |
| メーカー独自スキーマ | Sony XAVC、Canon XF-AVC など | 撮影設定、レンズ情報、シーン情報 |
| サイドカーファイル | Sony .XML、ARRI .ALE など | 動画本体とは別ファイルにメタデータを格納 |
EXIF というキーワードを「動画でも撮影情報を読み出したい」という意味で使うなら、答えは 「フォーマットは違うが、入っている」。中身のリッチさは、撮影機材しだいで写真より多い場合すらあります。
どこに、どんな情報が入っているのか
具体的に何が読み出せるのか、よくある項目を並べます。
- 撮影日時 — ほぼ確実に入っています(タイムゾーン情報は機種依存)
- カメラのメーカー・機種・ソフトウェアバージョン
- GPS 位置情報 — スマホ・アクションカム・最近の一眼で記録されることが多い
- 解像度・フレームレート・コーデック・ビットレート — これは「メタデータ」というよりコンテナそのものから取れる情報
- 色空間・カラーマトリクス・転送特性(Rec.709 / Rec.2020 / HLG / PQ など)
- タイムコード(SMPTE) — 業務機ではほぼ必須
- レンズ情報・絞り・シャッター速度・ISO 感度 — メーカー独自領域に記録されることが多い
- ホワイトバランス・ピクチャープロファイル — 同上
「同上」と書いた領域が曲者で、メーカーごとに入っている/いない/場所が違うものの最たる例です。Sony の業務機が書き出す XML には驚くほど詳細な情報が入っていますが、Canon の民生機の MP4 では同じ情報が抜けていることもあります。
どうやって中身を覗くか
ファイル単体で確認したい場合、定番のツールがいくつかあります。
ffprobe(FFmpeg 付属) — コンテナレベルの情報(解像度、フレームレート、コーデック、ビットレート、色空間)はこれで十分ExifTool— 名前は EXIF ですが動画にも対応。メーカー独自のメタデータまでかなり読み出してくれる、事実上の決定版- macOS の「情報を見る」 — QuickTime メタデータの一部が見える程度。本格的な確認には足りない
- NLE のプロパティ画面(Premiere Pro、DaVinci Resolve など) — タイムコードや色空間など、編集に直接効くものは表示される
興味があれば、手元の動画一本に
exiftoolをかけてみてください。「撮ったときの設定がここまで残っていたのか」と驚くケースが多いはずです。
編集・書き出しで「消える」メタデータ
ここからが実務的に重要な話です。撮影時にどれだけ豊富なメタデータが入っていても、編集ソフトを通すと多くが落ちます。
- カメラ独自のメタデータは、編集ソフトのプロジェクトを経由する時点で大半が失われる
- 書き出し時のコンテナ(MP4 / MOV / MKV)と、書き出しソフトの実装に依存する
- 編集ソフトによっては GPS や撮影日時すら維持しない
このため、「カメラ原本」と「書き出し済みファイル」では、メタデータの量がまるで違うのが普通です。原本を捨ててはいけない理由のひとつでもあります(コーデックの記事のアーカイブの章も合わせてどうぞ)。
サイドカーと「.XML / .ALE / .CSV」の世界
業務機の世界では、動画ファイル本体と別ファイルにメタデータを置く慣習が根強くあります。
- Sony —
.XMLサイドカーで撮影情報・タイムコード・ピクチャープロファイルなどを保持 - ARRI —
.ARI/.ALE、ALE は Avid 系編集との橋渡しに使う - Canon —
.CPF/.XML - ロケ現場のスクリプター —
.CSVや.EDLでショットノートを別管理
これらのサイドカーファイルはコピー時に置き去りにされやすい典型例です。MP4 だけ Finder で複製してしまい、隣にあった .XML を取りこぼす、というのはよくある事故。フォルダごと、あるいはオリジナルのフォルダ階層を保ったままコピーするのが原則です。
スマートフォンの動画は意外と情報が多い
iPhone や最近の Android で撮った .MOV / .MP4 には、想像より多くのメタデータが入っています。
- 撮影日時・GPS・端末モデル
- 縦横回転情報(再生ソフトはこれを見て自動回転している)
- Apple HEVC / HEIF のジャイロ・モーション情報(手ブレ補正の元データ)
- HDR フラグ(Dolby Vision の場合は別途メタデータトラック)
「スマホで撮ったクリップ」と「業務カメラで撮ったクリップ」が同じライブラリに混ざっているなら、両者からどの情報が引き出せるか把握しておくと、後の検索効率がまったく変わります。
VideoTagger はこの「動画の EXIF」を読みに行く
VideoTagger は、ライブラリに取り込んだ動画ファイルからメタデータを自動的に抽出します。コンテナレベルの情報(コーデック、解像度、フレームレート、ビットレート、色空間)だけでなく、撮影日時・カメラ機種・GPS・タイムコードなど、ファイルに残っていれば極力読み取って、検索とフィルタの対象にします。
- 「2024 年に Sony α7S III で撮ったクリップだけを集めたい」
- 「GPS 情報がついている素材だけ抽出して、ロケ別に並べたい」
- 「ProRes で 4K、Rec.2020 で記録されているマスター素材だけを横断したい」
こうした検索を、フォルダ階層やファイル名に頼らずメタデータベースで一発で返せるのが、VideoTagger の設計思想です。動画にメタデータが入っていることを知らないまま運用していたチームほど、導入後の体感差が大きい部分です。
まとめ
- 動画ファイルに「EXIF そのもの」はない。ただし MP4 の
udta/meta、QuickTime メタデータ、XMP、メーカー独自スキーマで同等以上の情報が入っている - 撮影日時・GPS・カメラ機種・タイムコード・色空間など、写真の EXIF に劣らない情報量
- 編集・書き出しを通すと多くが落ちる。原本を残すのが鉄則
- 業務機はサイドカーファイル(
.XMLなど)を別途出すので、フォルダごと保管する ExifToolやffprobeで簡単に中身を覗ける
「写真ほど騒がれないだけで、動画にもメタデータは確かに入っている」。これを前提に運用とアーカイブの設計を見直すと、ライブラリの価値が一段上がります。
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